メディア担当の方
インタビュー
2026.09.10
アスリートフードマイスター1級/管理栄養士
奥村衣梨

世界大会の出場を目指す現役女子高生サーファーで日本代表強化指定選手・松野杏莉選手(18歳)。
日々の練習や身体づくりに励むなかで、大切にしているのが食事管理です。
アスリートに欠かせない食材であるバナナやパイナップルも上手に取り入れています。
アスリートフードマイスター奥村衣梨さんとの対談を通して、競技力を支える食事の工夫と美しくしなやかな女性アスリートの身体づくりの考え方についてご紹介します。
現役女子高生* 2026年2月、インタビュー時
AFM奥村
本日はよろしくお願いいたします。
松野選手はご両親がサーフィンをされていたことがきっかけで始められたと伺っていますが、サーフィンをやろうと思ったのは何歳の時だったのですか?
松野選手
私は覚えていないのですが、3歳ぐらいのときに自分からサーフィンをやりたいと言っていたようです。小さいときから好奇心旺盛で、いろんなことに興味を持っていました。
AFM奥村
そんなに小さいときからサーフィンをやろうと思っていたのですね!
実際に始めたのはいつ頃だったのですか?
松野選手
小さいときは週末に海に行って砂遊びをしていて、サーフィンをやり出したのは小学校3~4年生ぐらい、本格的に始めたのは小学校5年生からです。海や水は怖くなかったので、自然とやっていた覚えがあります。
AFM奥村
小さい頃から海が身近な存在だったのですね。

(左)ホームとなる練習場「釣ヶ崎海岸」
(右)共に日本代表選手を目指す弟・松野太郎選手と杏莉選手
AFM奥村
サーフィンの魅力はどういったところにあると思いますか?
松野選手
波の上に立って滑るという、他ではなかなか得られない感覚が魅力です。
それと、夕方に練習をしていて海から見る夕焼けもとてもきれいで好きです。
陸から見るのとは違って見えて、海から見る夕焼けは魅力的に感じます。この景色が見られるので、サーフィンをやっていてよかったなと思います。
AFM奥村
海から見る夕焼けは特別な景色でしょうし、サーフィンをしているからこそ出会える瞬間ですね。そんな環境のなかで、弟さんも一緒に競技をされていると伺いましたが、お二人はどういう関係性でしょうか。
松野選手
弟は、身近なライバルとして切磋琢磨できるので、一緒にいて成長できる頼もしい関係です。
AFM奥村
ご家族で同じ競技に向き合えるのは心強いですね。

※撮影協力:U.G.Mthegym 〒299-4502千葉県いすみ市岬町中原233-1
AFM奥村
サーフィンの練習は、どれぐらいされているのですか?
松野選手
8時から12時までと15時から17時まで練習しています。
AFM奥村
1日に6時間も練習されているのですね!
サーフィン競技では、どういった身体づくりが求められるのですか?
松野選手
上半身と下半身の両方をしっかり鍛える必要があるので、練習以外にもスクワットやジャンプ、腹筋や腕立て伏せといったトレーニングを行っています。それから、体力づくりのためにランニングもしています。
AFM奥村
上半身、下半身の筋力と体力づくりを大切にしているのですね。
松野選手が特に意識している身体づくりのポイントはありますか?
松野選手
体の脂肪を少し減らすために、ダンス系の動画を見ながら有酸素トレーニングを行っています。
また個人的には腹筋を鍛えたいので、動画を見ながらのトレーニングも追加しています。友達や海外の選手のなかには、しっかり太い筋肉をつけている選手もいますね。
私もパワーアップのために下半身もしっかり鍛えていますが、自分としては足の細さは今のまま保ちつつ、出力を上げられるしなやかさを目指して、下半身強化に取り組んでいます。
関節は昔からやわらかいので、怪我をしにくい身体だと思います。特に股関節のやわらかさは周りの人も驚くほどで、自分の強みだと思います。
AFM奥村
関節がやわらかく、怪我をしにくいのは大きな強みですね。だからこそ下半身強化では出力を上げられるしなやかさを大切にされているのですね。脂肪を減らしたいとのことですが、目安にしている体脂肪率はありますか?
松野選手
目安にしている体脂肪率はなく、感覚的に脂肪を減らさなきゃと思っています。
AFM奥村
そうなんですね。単に「体脂肪を減らしたい」だけでは目標が見えにくいので、体組成計を活用して体脂肪率の数値を確認することで自分の状態がより把握しやすくなります。数値も参考にしながら調整できると理想的ですね。
松野選手
そうなんですね。体脂肪率を測って、自分の状態を把握したいと思います。

AFM奥村
今の体重はサーフィン競技に適していますか?
松野選手
週3回トレーニングを見てもらっているトレーナーからは、この身長ならもう少し体重を増やしてもいいと言われています。
AFM奥村
現在は増量されているのですね。ちなみに体重は毎日量っていますか?
松野選手
量っていないです。
AFM奥村
食べたものがどう体に反映しているかを確認することはとても大切です。
例えば、普段通りに練習と食事をしていても、体重が減っていることがあります。その場合、練習量が多かった可能性や、食事量をもう少し増やす必要があることがわかります。
松野選手
そうなんですね。体重は一日のうち、いつ量るのがいいですか?
AFM奥村
朝起床してトイレに行った後がおすすめです。このタイミングは水分や食事の影響が少なく、基準となる体重を把握しやすいです。体重を量るときは毎日同じ条件で行うことが理想で、衣類の重さもそろえるとより正確に数字が出ます。季節で服装が変わる場合も、その重さを把握していれば問題ないです。
松野選手
教えていただいたとおり、体重を毎日量ってみます!
AFM奥村
食事で気をつけているところはありますか?
松野選手
お米をしっかり食べることと、たんぱく質を意識してお肉や野菜を3食きちんと食べるようにしています。
AFM奥村
食事の質と量を意識して、三食欠かさず食べられているのは素晴らしいですね!
アスリートは運動量が多く、消費するエネルギーも大きいため、食事から摂取するエネルギーが不足すると健康上の問題が起こる可能性があります。
松野選手
健康にも問題があるのですか?
AFM奥村
特に女性では、エネルギー不足が月経機能や骨密度に影響し、長期化すると無月経や骨粗しょう症の原因になることもあります。これは「女性アスリートの三主徴」と呼ばれるものです。将来の健康にも関わるため、食事の量を意識することが大切です。
松野選手
将来の健康のためにも、今食べる量が大事なのですね!
AFM奥村
はい。しっかり食べているつもりでも、運動量に対してエネルギーが不足する場合があります。先ほどお話した体重測定も活用しながら、日々の食事量と消費エネルギーのバランスを確認することが大切です。特に、松野選手が意識しているご飯のほか、麺、パンなどに多く含まれる糖質は主なエネルギー源です。体型を気にしてご飯を減らす女性アスリートもいらっしゃるかもしれませんが、エネルギー不足につながる恐れがあるため気をつけたいところです。
松野選手
これからも意識してご飯をしっかり食べます。

AFM奥村
松野選手の周りのサーフィン仲間の皆さんはたくさん食べられますか?
松野選手
サーフィン女子はみんなよく食べますよ! 「このお店がおいしかった」など食べ物の話もよくします。
AFM奥村
仲間と食の話で盛り上がるのはいいですね。松野選手の「これがおすすめ!」っていうものはありますか?
松野選手
これまで食べたもので一番好きなものは、遠征先のカリフォルニアのハンティントンビーチで食べた「クリーミーセサミチキン」です。
照り焼きチキンとトマトとアボカドにソースがかかっているのですが、とてもおいしくてまた食べたいなと思っています。
今日は、地元の「PARASOL CLUBHOUSE」に行きます。仲のいい友達とおしゃべりするときに行くお店です。ハンバーガーやアサイーをよく注文しています。
AFM奥村
想像するだけで食べたくなりますね。好きなメニューに出会えると、競技のモチベーションにも繋がりそうでいいですね!
松野選手
そうなんです。食べることが好きなので、最近はいろんなところで食べ歩きをしてみたいと思っています。
AFM奥村
食べることに興味があるのはすばらしいですね。今は増量されているので、食べたいものを食べることで食事量も増やせると思います。増量期は量を食べることもトレーニングの一つなので、これなら食べられるというメニューを持っておくことも大切ですね。ちなみに、ご家庭で食べる食事のなかでは、何が好きですか?
松野選手
両親がいっしょに作るカレーライスが好きです。ルーも手作りで、肉とじゃがいも、にんじんが入っていて、たまねぎを煮込んでいるのがポイントです。
AFM奥村
仲よくお二人でカレーライスを作られるのですね。しかもルーからお手製で素敵です!カレーライスはご飯もたくさん食べられてエネルギーも取れるので、増量期にもぴったりのメニューですね。手作りのルーは市販のルーに比べて脂質も少ないですし、おいしく食べられますね。
松野選手
はい、本当においしいので、たくさん食べられます!

一宮町のロコガール・松野選手のお気に入りカフェ、PARASOL CLUBHOUSE
※撮影協力:PARASOL CLUBHOUSE 〒299-4301 千葉県長生郡一宮町一宮10113-3
AFM奥村
三食以外に補食は食べていますか?
松野選手
ゼリー飲料やバータイプの栄養補助食品を食べます。最近は朝にトレーニングがあるので、終わった後にバナナジュースを飲んでから、海の練習に行っています。
AFM奥村
バナナジュースを飲まれているのですね! ご自身で作られているのですか?
松野選手
はい。ミキサーでバナナと牛乳を混ぜて自分で作っています。
AFM奥村
ご自身で考えて作られているのは、すばらしいですね。バナナはエネルギー源となる糖質を多く含み、さらに吸収速度の異なる糖質を含むため、運動時のエネルギー補給に適した食材なんです。加えて、アスリートのコンディション維持に必要なカリウムも豊富に含まれています。トレーニング後にバナナジュースを飲むことで素早く栄養を補給し、次の練習へのエネルギー補給にもつながるのでとても効果的です。
松野選手
そうなんですね。よかったです。
AFM奥村
よりエネルギーを補給するためにはちみつを加えることもいいですし、トレーニング終わりでは身体づくりのためにたんぱく質を取ることが大切なので、牛乳にヨーグルトも加えるとより効率よく補給できます。状況に応じてアレンジしてみるのもおすすめです。
松野選手
いいことを聞きました! 試してみようと思います。

(左)松野選手が毎日飲むバナナジュース
(右)松野選手の地元のおすすめ店「PARASOL CLUBHOUSE」のアサイーボール
AFM奥村
松野選手は、パイナップルは食べますか?
松野選手
食べます。レストランで食べるパイナップルがのったハンバーグのメニューも好きですし、おかずとして調理されたパイナップルも食べます。
AFM奥村
パイナップルもエネルギー源となる糖質を含みます。また、糖質をエネルギーに替えるときに必要なビタミンB1、ハードな練習後にうれしいビタミンC、クエン酸を豊富に含むので、アスリートに食べてほしい食材です。酸味があり、疲れて食欲がないときもさっぱりとしているので食べやすく感じられます。先ほどカレーの話題がでましたが、カレーにパイナップルを和えてもおいしいですよ。
松野選手
パイナップルもアスリートにおすすめの食材なんですね!
AFM奥村
これから暑くなる季節に補食としても取り入れやすいですね。パイナップルは生で食べることで、たんぱく質を多く含むお肉などの食材と相性がよい酵素を取り入れられて、熱に弱いビタミンCを効果的に取ることができます。一方でパイナップルは肉料理との相性がよく、焼いてもおいしく食べることができるので、お肉のソースとして使うのも一つの方法です。
松野選手
お肉のソースですか?
AFM奥村
例えば、ロコモコ丼にパイナップルソースを合わせるレシピもあります。ソースの作り方はパイナップルを細かくカットしていため、トマト缶と中濃ソース、顆粒コンソメで味つけします。
松野選手
おいしそう! 食べてみたい!
AFM奥村
パイナップルはトマトと相性がよいので、トマトケチャップでもおいしくできますよ。鶏肉や豚肉をいためたものに、このパイナップルソースをかけても合います。
松野選手
今度作ってみたいと思います。
AFM奥村
気に入ってもらえてよかったです。以前お話したときにパイナップルがのったハンバーグのメニューが好きと聞いていたので、パイナップルソースは合うかなと思っていました。好きなものを食べて食に興味を持つことで食べ物の選択肢も広がるので、レパートリーの一つに加えていただけたらうれしいです。

(左)松野選手がチャレンジした料理「パイナップルソースのロコモコ丼」
(右)松野選手の地元のおすすめ店 「PARASOL CLUBHOUSE」のパワーコブサラダ
AFM奥村
ちなみに、オフの時間やリラックスタイムは、何をして楽しんでいますか?好きなことや、仲間内で流行っていることはありますか?
松野選手
仲のいい友達の間ではアニメや漫画が流行っていて、好きな作品の話をしています。昨年の冬のアニメでは「多聞くん今どっち!?」が面白かったです。アイドルとファンの恋愛を描いたストーリーが共感できて、とても好きでした。定番作品で好きなのは「僕のヒーローアカデミア」です。ストーリーのなかの言葉が、今の私に凄く響いて自分の目指す姿を重ねて読んでいるところがあると思います。
AFM奥村
アニメが好きなんですね! 練習は大変だと思うので、そういう息抜きをする時間があるのはいいですね。
松野選手
アニメの世界を楽しむことで、気持ちの切り替えができますし、仲間と語り合える時間も楽しいです。
AFM奥村
競技に集中する時間と、趣味でリフレッシュする時間のバランスが大切ですね。

AFM奥村
楽しいお話をたくさん聞かせていただきました。では、最後に今後の目標を教えていただけますか?
松野選手
直近の大きな目標としては、2028年開催予定のロサンゼルスオリンピックに出て、世界一を取ることです。継続的に目標としていることは、世界に数人しか入れないリーグ「World Surf League」のチャレンジャーシリーズ(CS)に入って活躍し、チャンピオンシップツアー(CT)へ参加することです。今年はその1つ下のリーグに入ることを目標としています。
AFM奥村
素晴らしい目標ですね! そのリーグに入るには、試合で優勝することが必要なのでしょうか?
松野選手
年間のランキングで決まるのですが、トップ3に入っていることが条件になります。
AFM奥村
トップ3に入らないといけないのですね。年間の試合数は多いのですか?
松野選手
1年で10試合ぐらいあります。
AFM奥村
そんなにあるのですね! 海外でも試合はありますか?
松野選手
海外でもあります。海外大会に出るためにはより強さが必要なので、もっと自分の分析をして、上手くいかないときに立て直しができるような自分になりたいです。今までは苦労なく優勝してきたけれど、父親からも「そんなに器用な選手でないから、毎日練習を欠かしてはいけない」と言われているんです。
AFM奥村
そうなんですね。海外大会の出場は、大きな目標だと思いますが、日々努力されていらっしゃるので、リフレッシュのバランスを大切にしながら、さらなる飛躍を期待しています。

AFM奥村
練習を共にしているサーフ仲間のみなさんへのメッセージはありますか?
松野選手
いつも一緒に頑張っている仲間には感謝しているので、これからもよろしくお願いします!
AFM奥村
仲間と楽しみながら世界へ挑戦する松野選手を、これからも応援しています。本日はありがとうございました。

勝ったときより負けたときの方がエンジンがかかる、というストイックなアスリートの面がある一方、女性らしさも磨いて、高校を卒業したら女の子らしい姿で外出もしたいと言う松野選手の思いが見えるインタビューでした。これからは世界の選手たちと交流もしたいので、英語も勉強したいのだとか。
目標としている選手は、16歳で「Triple Crown of Surfing」史上最年少チャンピオンに輝いたアメリカ代表のカリッサ・ムーア選手。
大きな筋肉だけに頼らない美しくしなやかな身体づくりに向き合い、無邪気な高校生から自分の分析ができる芯のあるプロサーファーへ成長しようと懸命に挑戦している姿がまぶしいサーフィン女子の松野杏莉選手でした。これからのご活躍が楽しみでなりません。
企業研究開発グループの経験から栄養の大切さや栄養情報の発信、各種学会での食品の機能性発表を長く行っている。
その傍ら一般向けの講演や、プロアスリートの方々に栄養相談を担当しコンディション向上に繋がる情報を都道府県問わず、各地域で実施中。
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企業研究開発グループの経験から栄養の大切さや栄養情報の発信、各種学会での食品の機能性発表を長く行っている。
その傍ら一般向けの講演や、プロアスリートの方々に栄養相談を担当しコンディション向上に繋がる情報を都道府県問わず、各地域で実施中。
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