メディア担当の方
― 暮らしと文化を支える“調理用バナナ”の物語 ―
コロンビアの食卓に欠かせない“プラタノ”。
家庭の味として、そして歴史と文化を映す象徴として愛される調理用バナナの魅力を探りました。

「プラタノ(Plátano)」とは、コロンビアで広く食べられている調理用のバナナを指します。
日本では「バナナ=甘く熟した果物」という印象が強いですが、コロンビアでは緑色のまま揚げたり、焼いたり、つぶしたりと、主食の一つとして食べられています。
大使館での取材の冒頭、二等書記官のパブロ・カルドナ氏は次のように語りました。
「コロンビアでは“バナノ(Banano)”と“プラタノ(Plátano)”を明確に区別しています。
バナノは果物として食べる甘いバナナ、プラタノは料理として使う食材。
この違いは、私たちの食文化そのものを表しているのです。」
プラタノは、成熟度によって味も食感も大きく変わります。
青い未熟な状態はデンプン質が多く、塩気のあるおかずや主食として使われる一方で、黄色く熟すとほのかな甘みが加わり、デザートや軽食にもなります。
家庭では、パタコン(Patacón)と呼ばれる揚げプラタノが特に親しまれており、肉料理や豆料理の定番の付け合わせです。
この料理は、緑色のプラタノをスライスして油で軽く揚げ、一度取り出して押しつぶし、再びカリッと揚げるという手間のかかる一品。
その香ばしさともちもちした食感は、一度食べたら忘れられません。

今回の取材は、東京都品川区にある駐日コロンビア共和国大使館公邸で行われました。
落ち着いた雰囲気の邸宅のキッチンからは、香ばしいプラタノの香りが漂い、2等書記官のパブロ・カルドナ氏が笑顔で私たちを迎えてくれました。
今回、コロンビアの伝統料理を用意してくださったのはコロンビア大使館のシェフ、ルシラ・ラミレス氏です。
パブロ・カルドナ氏はさまざまな外交の場でコロンビアの家庭の味と、その温かさを伝えてきました。
「プラタノは、どの家庭にもある食材です。
どんな地域でも、どんな世代でも、これを使えば“家の味”が思い出せるんです。」
この日用意してくださったのは、パタコン・コン・トード(Patacón con Todo)とバナナフランのパッションフルーツソース添え (Banana Flan with Passion Fruit Sauce)。
前者は肉や豆、ソースをたっぷりのせたボリューム満点の料理、後者は南国らしい香りを生かした上品なデザートです(これらのレシピは別記事で紹介しています)。

パブロ・カルドナ氏は、プラタノをめぐるコロンビアの食文化を語るなかで、「バナナ栽培の歴史」についても触れ、非常に興味深い話を聞かせてくれました。
「コロンビアのバナナの歴史は、豊かさと闘い、そして連帯の物語です。
それは、私たちの社会の変化を映し出す鏡でもあります。」
コロンビアでは20世紀初頭から、北部のマグダレナ地方を中心にアメリカのユナイテッド・フルーツ社による大規模なバナナ栽培が始まりました。
バナナはコロンビアの輸出品として国の経済を支えましたが、同時に労働者の過酷な労働条件が社会問題化していきました。

1928年、労働者たちは労働環境の改善を求めてストライキを起こしました。
しかしアメリカ政府に圧力をかけられたコロンビア政府軍はこれを鎮圧し、数百人規模の犠牲者を出したとされています。
この出来事は「バナナ虐殺(Masacre de las Bananeras)」としてコロンビア史に深く刻まれました。
またこの悲劇は、ノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表作『百年の孤独(Cien Años de Soledad)』の中で象徴的に描かれ、現実と非現実を区別せずに織り交ぜる文学スタイルである"魔術的リアリズム”の一場面として世界中で知られています。
ガルシア=マルケスは、自身が育ったアラカタカ町(小説中の架空の町・マコンドのモデルとなったとされる)で見聞きしたこの事件をもとに、バナナ産業の光と影を文学として昇華させたのです。
二等書記官は語ります。
「バナナはコロンビアの経済を支えた一方で、社会的な闘いと人々の連帯を象徴する存在でもあります。
だからこそ、私たちはそれを“文化”として語り継ぐのです。」

コロンビアは南北に長く、カリブ海からアンデス、アマゾンまで多様な気候帯と食材に恵まれた国です。
そのような地理的特徴が、地域ごとに異なるプラタノの調理法を生み出しました。
カリブ沿岸では、塩味のきいた主食・パタコンが、内陸部では、熟したプラタノをバターやチーズとともに焼くマドゥーロ・コン・ケソ(Maduro con Queso)が人気です。
また、包み焼きにしたり、スープの具にしたりと、「どんな場面でも登場する万能食材」
だとパブロ・カルドナ氏は笑います。
「プラタノは、素材そのものが語りかけてくるんです。
揚げても、焼いても、煮ても、それぞれに“家族の味”がある。」
その言葉どおり、プラタノ料理は地域の個性と人々の温もりを映しています。

コロンビア大使館では、各国との交流イベントの際にもこのプラタノ料理を振る舞うことが多いそうです。
「一皿の料理が、国の文化を語る言葉になる。
食を通してコロンビアの多様性と温かさを感じてほしい。」
外交の場においても、家庭の味を届けるという姿勢は変わりません。
シェフのルシラ・ラミレス氏が丁寧に仕上げた料理は、国のイメージを超えて、人と人を結びつける“食の架け橋”となっています。

最後に、パブロ・カルドナ氏はこう締めくくりました。
「私たちにとってプラタノは、単なる食材ではなく“記憶”です。
家族、土地、そして歴史を語る手段なのです。」
コロンビアの食文化において、バナノとプラタノは「甘味」と「主食」という異なる役割を担いながらも、ともに人々の心と暮らしを支え続けています。
大使館での取材を終え、プラタノの香ばしい香りとともに残ったのは、“食が文化そのものを語る”という確かな実感でした。
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