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歴史・世界の情報
2025.10.22
16世紀にスペイン人が持ち込んだバナナは、いかにしてペルー文化の主役となり、輸出16万t超 ・有機比率約 95%の巨大産業へ成長したのか──フリオ・テノリオ一等書記官(Julio Tenorio, First Secretary, Embassy of Peru)へのインタビューを手掛かりに、ペルーにおけるバナナの歴史、栽培地、栄養価、サステナビリティの最前線をひも解いていきます。
「バナナがペルーに定着したのは 16 世紀初頭、スペイン人の到来がきっかけです」と、テノリオ書記官。インカ時代の編年記やキープ(ひもの結び目を使って数字を記録するシステム )にバナナの記載はなく、当時の主食はトウモロコシやキヌア、豆類でした。
スペイン統治下では沿岸部に大農園 が開かれ、サトウキビに並んでバナナの苗木栽培が始まりました。さらに1821年の国家独立前後には港町カヤオ周辺でバナナ加工品の屋台が登場し、都市部の食文化に溶け込んでいきました。
“年中収穫”がもたらした普及
「バナナは一年中収穫できるうえ、価格はコメの約3分の1。栽培コストも低く、農村でも都市でも欠かせない日常食品となりました」と書記官。第二次世界大戦中には甘味料不足を補う“レスキューフード”としても重宝されました。
1960年代、教育省が「持参フルーツ運動」を開始して以降、子どものランチボックスにバナナが入るのは全国的な習慣に。「私も学生時代は毎日2本携帯していました」と書記官は笑います。
2024年、ペルーのバナナ輸出量は163,197t(輸出額1億4,600万USD)となり、世界19位にランクインしました。国別ではオランダ、米国、パナマ向けで約55%を占めています。なお国内生産量は約241万tに達し、自国消費量は輸出量の約15倍となっています。
EU、アジアとの協定発効で主要市場へのアクセスが改善。さらにパイタ港では2019年にリーファー設備の拡張や喫水・バース延伸計画が進み、生産地側でも同年に40t規模の冷蔵庫が稼働するなど、輸送品質の確保とコスト低減への取り組みが強化されました。これらが輸出の伸長を後押ししていると考えられます。
輸出バナナの約95%が有機認証品 であることも、ペルー産バナナの特徴です。農家は農薬の代わりにバナナの葉の抽出液をはじめとする天然資材 を使用し、3年間の「転換期」を経たのち、有機認証が取得できます。
赤道に近い北部沿岸にあるピウラ州やトゥンベス州は年間平均気温約24℃、降雨量約1,000mm。乾季でもチラ川が豊富な水量を供給し、通年収穫を可能にしています。
中央アンデスの東斜面、チャンチャマヨ郡やサティポ郡の標高約600〜800mに位置する地域は亜熱帯性気候で、昼夜の寒暖差が甘味の強い小ぶりな品種を育みます。高原部(標高約4,000m)が多いフニン州ですが、先述の低標高帯は病害虫リスクが低く有機農業へ転換しやすいため、国内外バイヤーの注目を集めています。
ペルーの農家の約8割は5ha未満の家族経営というのも特徴の一つです。一方で、前払い買取を保証する「アコピオモデル」が定着し、最近は小規模な農協でもブロックチェーンでロット追跡ができるシステムを試験導入しています。
一部のスポーツ栄養コーチは、持久力を要する競技のアスリートに対し、レース前後の栄養補給にバナナを推奨することがあります。推奨量は200g(2本)程度[1]。その理由は、運動で失われがちなカリウムを効率良く補給できる点や、難消化性デンプン(レジスタントスターチ)が腸内環境をサポートする可能性があるからです。これらの特性は、アスリートのコンディション維持に役立つと考えられています。
バナナの主要栄養素は、カリウム、ビタミンB群、プレバイオティクスです。100gあたりのカリウムは、360mg、難消化性デンプン(レジスタントスターチ)は0.3~4.7g、GI値は47 [2][3][4]です。書記官は「バナナは運動後の身体のコンディショニングに最適」と語ります。
ペルーでは北部沿岸からアンデス山麓、アマゾンの熱帯域まで、さまざまな地形と気候のもとでバナナが栽培されています。標高、気温、降水量の違いは、生育のスピードや甘味の出方、食感など品質の違いにつながる可能性があります。産地ごとの環境に合わせて、収穫熟度・追熟温度・輸送条件を調整することが、品質の安定に役立ちます。
ペルーでは、食品の安全と品質を守る「HACCP」の基盤となるPCC(重要管理点)を厳守しており、スマホアプリで畑単位のチェックリストを送信する農家も増えています。
収穫後は青い状態のまま13℃で輸送し、到着地で追熟。距離により航空便も併用し、鮮度を保持しています。将来はトレーサビリティを強化したブロックチェーンの導入を計画しています。
栽培されているバナナは、青バナナの「プラタノ・ベラコ」、極小で甘い「ブグジージョ」、酸味が効いた「ベビーバナナ」など多様です。また研究段階ではありますが、低糖質ながらも甘いハイブリッド型の品種の生産も期待されています。
テノリオ書記官は「2030年までにアジア市場シェアの大幅拡大を目指す」とし、市場の多角化を展望しています。一方で、港湾冷蔵倉庫の拡充、鉄道連携などの輸送インフラ強化や、フードテック企業との共同開発(バナナフラワー、プロテインなど)を課題に挙げています。
16世紀のスペイン統治下で種子が持ち込まれて以来、バナナはペルーの食文化に欠かせない農作物となり、 今日では世界19位の輸出国に成長しました。現在ではオーガニック比率約95%という希少価値を武器に、北部沿岸とフニン州東斜面の約16万haが支えるサステナブル・サプライチェーンを確立。高い栄養価と徹底した品質管理、テクノロジー導入を追い風に、ペルー産バナナはアジアをはじめ世界市場でさらなる飛躍を目指しています。
参考文献
[1]Dole(ドールジャパン).バナナの適量は1日何本? 管理栄養士が教えるベストな食べ方
[2]文部科学省.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[3]Dole(ドールジャパン). バナナ番長、参上!JO1佐藤景瑚さんと一緒にバナ活®習慣を始めよう!
[4]Dole(ドールジャパン). バナナのカロリーとダイエットの関係
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